月山貞勝 皇太子殿下(今上天皇)御誕生記念作品
造込 平造、三ツ棟、長さ頃合いよく 反り無シ
地 板目がS字状をなす綾杉肌、肌立ちごころ
刃 直刃調、小沸付く
帽子 直ぐで入り小丸
茎 生ぶ、目釘孔一、刃上がり栗尻、化粧鑢
■ 大正から昭和初期にかけて、大阪を拠点に華々しい活躍を見せた
月山貞勝 の短刀です。
まずは月山の代名詞とも言える綾杉肌。 幾重にもS字模様を描く肌は、じっと見入ると まるで迷路に迷い込んだかのやうな錯覚を覚えます。
さりとて肌立ちは押さえ、決しておごらず、さらりと描くところは、さすがは貞勝、名工の真骨頂と言えるでしょう。
この綾杉文様は刃中にもあらわれ、その上に直刃を置く構図は、他の流派には見られない 独特の幾何学的な世界を作っています。
■ さて本短刀は、今上天皇が昭和8年12月23日に 御誕生あそばされた折りに打たれた五振りの内の一振りにて、されば一振りは月山家の元に、一振りはボストン美術館、本刀を含めた二振りは市井に在り、そして一振りはかしこきあたりに納められています。
■ 近代の刀剣界を担った月山家。 皇室をはじめ各界からの信頼篤く、時代の折々に貴重な御刀を納めてきました。
皇太子殿下(今上天皇)御誕生記念として作られた本刀は、作柄はもとより、歴史的かつ文化的価値高く、いにしえの優刀とは異なる次元に存在しています。
月山貞勝 短刀。 重宝とすべく一振りです。
干将庵 / 2013年6月14日