肥前国陸奥守忠吉 (三代)
造込 鎬造、庵棟、反り深く付き、身幅元先さまで変わらず、中鋒
地 小板目細かに約(つ)み、ハバキ元に地景顕る
刃 一寸程焼だし、大房の互の目、丁子をまじえ、砂流し、
金筋入り 匂い足深く、小沸付き 匂い口明るい
帽子 直ぐで丸
彫物 表 二筋樋、裏 棒樋 共に掻流し
茎 生ぶ、鑢目切り、栗尻、孔一つ
■ 「(歴代)忠吉の作品中 価値の高いものは、初代忠吉についで
“ 陸奥守忠吉 ” といわれる。 この脇指はその傑出の一口である。」
[新刀大鑑より抜粋]
冒頭の一文が示す、三代忠吉 陸奥守忠吉 傑出の脇指です。
伸びやかで 堂々とした姿。 見事に綺麗に細かく約んだ地鉄。
金筋や砂流しを自在にまじえ、明るく輝く小沸が たっぷりと付いた乱刃。
表裏共に美しい弧を描く帽子。 飽くことなく 時を忘れて、いつまででも目が惹き付けられます。
加えてしっかりと立った刃区、うっすらと残る生ぶ刃など、健全な刀身は 本刀の来歴の良さを想像させます。 ちなみに登録は昭和26年、登録番号は3桁と、これだけでも出自の良さを知ることが出来るでしょう。
■ 陸奥守忠吉は、佐賀藩鍋島家の御刀鍛冶 三代を継承するも、50歳で没しており、自身銘の作品は余り多くはありません。
その三代忠吉の 高い位を示す一振り。 所有する幸福感を得ることの出来る 数少ない逸品です。
干将庵 / 2013年11月12日