五島源正蔭作之
造込 鎬造、庵棟、寸延びて浅く反り、元先の身幅変わらず、中鋒
地 小板目細かに約(つ)む
刃 小丁子 小互の目 尖り互の目 片落ち互の目を 頭を揃えて
まじえ、足刃先近くまで長く入り、小沸付く
帽子 乱れ込み 尖って浅く返る
彫物 棒樋 ハバキ中丸留
茎 生ぶ、化粧鑢、刃上がり栗尻、孔二つ
■ 正蔭は、源清麿の高弟 源正雄(鈴木正雄)門人、清麿の孫弟子にあたります。
清麿の御刀が地刃共に躍動感溢れるのに対し、本作は緻密にして繊細、知性的な趣を携えた優刀です。
小丁子 小互の目に、尖りごころの互の目や 片落ち互の目をまじえ、乱れの頭を一線に揃えた刃紋。
多様な刃文をモザイク画のように適所に当てはめ、しかも破綻なく焼き上げた技量は相当なものです。
またこの刃文が載る地鉄は、細かに約んだ小板目。 こちらも波状なく念入りに鍛えられ、また腰元には地景を見せるなど、
地鉄からも正蔭の技量を窺い知ることが出来ます。
■ 正蔭は、幕末・安政から明治初年にかけて鍛錬を行っていますが、作刀数が少く、目に触れる機会も限られていました。
そのためか 幕末期の一刀匠という位置づけですが、本刀を見るにその評価は大きく変わることでしょう。
清麿とは全く異なった作風ですが、華麗な一門の系譜をしっかりと継承する 正蔭 の一振り、優刀です。
干将庵 / 2013年12月15日